経費精算のIT化は“作業効率化にとどまらない価値生む”――経営課題を可視化する「経費Bank」の実力はスマホ対応で“どこでも承認”

» 2012年01月24日 18時11分 公開
[柴田克己,ITmedia]
Photo SBIビジネス・ソリューションズ常務取締役の北山哲也氏

 費用対効果が見えにくいものは後回しに――。ITによる業務の効率化を考えるときには、つい、こんな考えに陥りがちだ。中でもバックオフィス業務である経費精算業務のシステム化はその傾向が強く、今でも毎月毎月、数百人分の経費を、紙やExcelベースのワークフローで処理している会社が案外多いという話を聞く。

 そんな中、経費精算業務のIT化は作業の効率化にとどまらない付加価値を生み、コスト削減も期待できる――と話すのがクラウド型経費精算システム「経費Bank」を提供するSBIビジネス・ソリューションズで常務取締役を務める北山哲也氏だ。

 経費Bankは、中堅中小規模から大規模までの企業ニーズに幅広く対応する経費精算システム。インターネットに接続できる回線さえあれば社内外を問わず、あらゆる環境から精算業務を行えるのがメリット。iPhoneやiPadにも対応しているので、経費を使ったそのときにその場で入力してしまうことも可能だ。各種の申請に対する上長の承認も外出先から行えるので、承認待ちで時間を無駄にすることも少なくなる。

 このシステムは、精算を行う社員だけでなく、経理業務の担当者にもメリットがあると北山氏。経費精算のデータは企業で利用している会計ソフトに出力できるため、入力作業が二度手間にならずに済むからだ。

 経営者にとっては、システムの構築や運用に投資することなく導入できるクラウド型である点がメリットになる。自社でシステムを構築し、運用しようとすれば、システム管理ができる人材の採用やソフトの開発、バックアップ環境の整備など、付随するさまざまな要素を考慮しなければならなくなる。しかしクラウド型のシステムであれば、システム管理やセキュリティ、データのバックアップといった点はすべてベンダーに一任でき、この違いは経費の節減にも効いてくる――というわけだ。北山氏は「自社でシステムを持つよりも、コスト面で回収は早く、業務効率も高くなる」と自信を見せる。

 初期導入コストを低く抑えられる点や、迅速な導入が行える点は、クラウド型サービスの分かりやすい利点の1つだ。経費バンクのシステム利用料は、初期費用が18万9000円。月額利用料は50ユーザーまでの場合2万6250円となる。追加IDの利用料は50ユーザー単位で月額1万5000円。仮に80人で利用した場合、1ユーザーあたりの月額は約460円となる。また導入期間は、事前の経費精算フローのヒアリングや設定を含め、1000人規模の企業でも約2〜3週間で運用に入ることが可能だという。

Photo 経費Bankのサービス概要

ICカードやスマートデバイスへの対応でさらに効率アップ

 経費Bankは、SBIグループの経理業務を集約するためのシステムとして開発され、その後グループ外の一般企業にも提供されるようになった製品。サービス開始後の1年で、導入実績は110社、1万ユーザーに達したという。この間、ユーザーから挙がってきたさまざまな要望に応えながら、機能や使い勝手に磨きをかけてきた。

 SuicaやPASMOといったICカード乗車券によるデータの自動入力機能も、ユーザーからのリクエストによって追加された機能の1つだ。ICカード対応は経費Bankのオプションとして提供されている機能で、これを利用すると、申請者がICカードリーダーにカードをかざすだけで、日時、金額、乗車区間といったデータを自動的に経費Bankに取り込めるようになっている。

 取り込み後の処理も細かく行える。例えば、私用と社用のデータが混在する場合には、それらを申請者が目視で振り分けることも可能だ。そのほか、経路検索ソフトの「駅すぱあと」と連動して、定期券使用区間を考慮した交通費の計算が自動で行われたり、駅の売店などでの物品購入に使った金額もそれぞれに申請するかどうかを決められたりと、申請作業の効率を上げられるよう、きめ細かい配慮がなされている。

Photo ICカード乗車券のデータを取り込むことも。私用と社用のデータが混在している場合には、私用データを除外して申請できる

Photo 手間をかけずに入力できるよう、経路検索ソフト「駅すぱあと」との連携機能や、登録したパターンからの引用で入力できる機能を用意している

 iPhone、iPadをはじめとするスマートデバイスへの対応も、業務効率を上げることを念頭に追加されたものだ。これらのスマートデバイスから経費Bankを利用する際のメリットとして最も大きいのは「承認」作業が大幅に効率化される点だろう。

 経費精算作業が遅れがちになる理由の1つとして、外出が多くなりがちなプレイングマネージャーが承認者を兼ねる場合などに、承認者のところでフローが止まってしまうという状況がある。スマートデバイスへの対応により、承認者はオフィスに置かれたPCの前に座らなくても、出張先や外出先の空き時間などに承認作業を行えるようになる。

 申請者からの通知メールによって、承認データの有無や件数の把握が行えるほか、作業時には申請された各経費データが「駅すぱあと」「ICカード」「手入力」のどの方法で入力されたものかを一覧で確認できるようにもなっており、チェック作業の効率と精度を上げられるよう工夫されている。

Photo 申請はiPhoneやiPadからも行える。文字入力を極力減らすため、登録したパターンを呼び出したり、「駅すぱあと」連携機能を使えるようにしている

 このように、精算時の入力の手間を軽減することで誤入力を防ぎ、どこでも承認できる環境を整えることで、申請者や承認者の作業時間や負担を軽減できると北山氏。スタッフはその短縮された時間をほかの作業に使うことができ、時給で換算すればコスト削減にもつながることが分かると説明した。

経費精算プロセスを改善するきっかけに

Photo ソリューション営業部でマネージャーを務める佐藤直己氏

 経費精算をクラウドベースのシステムに移行することで得られる投資対効果は、業務効率の向上やコスト削減にとどまらない。リアルタイムでお金の流れを把握できるようになることで「経営状況の可視化」が可能になるのも見逃せない点だ。

 SBIビジネス・ソリューションズのソリューション営業部でマネージャーを務める佐藤直己氏は、「ある程度の規模の企業であれば、経費Bankを導入することで、分散している事業所などを含め、経費に関する申請・承認データの本社による一括管理が可能になる。経費精算のために登録されたデータはリアルタイムに集計され、分析用のデータとしてピボットテーブル付きのExcelファイルに出力することができる」と説明する。

 このExcelデータをもとに定型のリポートを作成することもできるし、目立って経費が多い月があるようならば、明細単位でドリルダウンし、その原因を突き止めるといったことも短時間でできるようになる。また、支払予定表により、支払先別、日付別の金額集計や支払管理データを作成することも可能だ。経営者にとって、月次での決算が早期化され、内容に問題がある場合は速やかにその原因を追求できる環境は魅力的に映るはずだ。


 100社を超える企業によって継続的に利用されているシステムが持つ申請や承認、処理のプロセスは、ある意味で経費精算業務のベストプラクティスを反映したものだという見方もできる。

 業務の効率化と経営状況の可視化というメリットを追いつつ、経費精算業務のシステム化を進める中で、自社の業務プロセスを改めて見直し、継続的な業務改善のサイクルを作っていくきっかけとすることもできるのではないだろうか。

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